令和3年7月29日(木)に開催された「日本語教師の資格に関する調査研究協力者会議(第9回)」において、
日本語教育の推進のための仕組みについて(報告案)が示されました。この報告案を基に、公認日本語教師の資格取得要件についてお伝えしたいと思います。

※尚、第2回協力者会議において「公認日本語教師の資格創設に向けてのロードマップ(案)」が示されております。この資料に基づきますと、公認日本語教師資格の全面施行は令和6年以降となっております。

公認日本語教師の資格取得要件について

原則として、公認日本語教師になるためには、下記の両方を満たす必要があります。
1. 日本語教育能力を判定する試験に合格
2. 教育実習の履修及び修了
*学歴、年齢、国籍、母語は問われません。

それぞれついて、もう少し詳しく見ていきましょう。
「1. 日本語教育能力を判定する試験に合格」について……
<実施者>文部科学大臣又は文部科学大臣が指定する法人(1機関)
<試験回数>年1回以上
<試験地>全国各地
<出題形式>筆記試験
<試験構成>筆記試験①と筆記試験②の二つに分かれます。

筆記試験① 原則として、出題範囲の区分ごとの設問により、日本語教育の実践につながる基礎的な知識を測定
筆記試験② 出題範囲が複数の区分にまたがる横断的な設問により、熟練した日本語教師の有する現場対応能力につながる基礎的な問題解決能力を測定
また、基礎的な知識・技能及び基礎的な問題解決能力について、音声を媒体とした出題形式で測定

試験の出題範囲は「日本語教育人材の養成・研修の在り方について(報告)改定版」(平成31年3月4日文化審議会国語分科会)にある日本語教師の養成において必ず実施すべき内容として示された「必須の教育内容」の50項目に基づくとされていますので、現行の文化庁届出受理の日本語教師養成講座の教育内容に対応しているものと考えられます。
※「日本語教育能力検定試験」(公益財団法 人日本国際教育支援協会主催)とは異なる新たな試験が開発、実施される見込みです。

「2. 教育実習の履修及び修了」について……
教育実習は「指定日本語教師養成機関」での履修及び修了が求められます。「指定日本語教師養成機関」とは文部科学大臣が指定する日本語教師養成機関となります。
※現在の文化庁届出受理研修実施機関も「指定日本語教師養成機関」になるためには、改めて確認を受ける必要があります。

その他、大切なポイントをいくつかピックアップいたします。
【試験の一部免除及び教育実習の免除】について……
先述の文部科学大臣が指定した日本語教師養成機関(420時間以上)、または文部科学大臣が指定した大学等の日本語教育に関する教育課程(26単位以上)を修了した方は、筆記試験①と教育実習が免除されます。筆記試験②の受験は必要となります。

【現職日本語教師等の資格取得方法】について……
現行の法務省告示の日本語教育機関の教師要件を満たす者が「公認日本語教師」を希望する場合、原則として、新たに実施される筆記試験①と②両方の合格、及び指定教育機関における教育実習履修・修了の要件を満たす必要があります。
但し、質が担保されている機関で一定年数以上働く等、教育の現場における実践的な資質・能力が担保される者に関しては、教育実習の免除などの配慮が検討されています。
※公認日本語教師の資格は「名称独占資格」ですので、現職の日本語教師の方々は引き続き、日本語教師として活躍することは可能ですが、日本語教育の類型化に関する議論の中で、各機関における「公認日本語教師」の配置基準等も議論されていることも併せてお伝えしておきたいと思います。

パブリックコメント提出のお願い
文化庁では、2021年9月17日まで「日本語教師の資格・類型化に関するパブリックコメント」を募集しています。ぜひ皆さまのご意見をご提出ください。
https://public-comment.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=185001182&Mode=0

現職日本語教師等の資格取得方法にある「質が担保されている機関」とは何をもって判断されるのか?、「一定年数以上」とは何年以上なのか?など、現職日本語教師の方々が「公認日本語教師」になる道筋には、検討事項が多々あります。
また、現在の文化庁届出受理講座を修了した方々が、文科大臣指定の日本語教師養成機関修了者と同様に、試験の一部免除及び教育実習の免除対象になるのか。教育内容は同じですので免除対象となって然るべきであると思われますが、より多くのお声が必要であると考えております。
ぜひ、文化庁が2021年9月17日まで募集をしております「日本語教師の資格・類型化に関するパブリックコメント」に、皆さまのご意見をお寄せいただきたく存じます。


今後、外国人就労者の需要拡大、それに伴い、外国人児童や外国人生活者の増加も見込まれます。また、欧米諸国に比べて学費や生活費が抑えられる日本の大学等への進学を目的とした外国人留学生の増加も見込まれます。
日本語教育・日本語教師の必要性が増しているからこそ、「公認日本語教師」という国家資格化が議論されています。これから日本語教師を目指す方も、既に日本語教師として活躍なさっている方も、皆さまのお考えが法制化の過程で反映される可能性がある今、ぜひパブリックコメントをお送りいただければと思います。